デルタ・ブルースの創世記、1930年代にミシシッピ州を拠点とするロバート・ジョンソンが歌い奏でた「Cross Road Blues」は、その後のブルース音楽に計り知れない影響を与えた楽曲である。この曲には、当時の社会状況や人々の苦悩が深く反映されており、彼の独特なギターテクニックと魂を揺さぶる歌唱力が融合し、時代を超えて愛される名曲となっている。
「Cross Road Blues」の歌詞は、悪魔との取引を題材とした物語で、その後のブルースミュージックにおいて頻繁に取り上げられるモチーフとなった。ジョンソンが歌っているのは、自分の人生を変えたいという強い欲望と、その代償として魂を売ることへの葛藤である。このテーマは、当時の黒人コミュニティの貧困や差別といった厳しい現実を反映しているとも言えるだろう。
ジョンソンのギタープレイは、「スライディング」と呼ばれるテクニックが特徴的で、彼の独特な音色を生み出している。瓶の首をギター弦に押し当てて音を出すこのテクニックは、当時のデルタ・ブルースで広く用いられており、ジョンソンはその中でも特に卓越した技巧を誇っていた。また、「Cross Road Blues」のギターソロは、シンプルな構成ながら力強く感情的な表現が詰まっており、聴く者を魅了する。
ボーカルにおいてもジョンソンの歌唱力は際立っている。「Cross Road Blues」では、彼のハスキーで力強い声が、歌詞の持つ切なさや苦悩を鮮明に描き出している。彼の歌声は、まるで魂を込めて歌い上げているかのようであり、聴く者の心に深く響く。
「Cross Road Blues」は、1936年にボジアン・レコードからリリースされた。当時、レコードは黒人コミュニティを中心に普及し始めており、ジョンソンの音楽も多くのリスナーに届いた。しかし、彼は若くして亡くなってしまい、その才能を世に広く知らしめることはできなかった。
彼の死後、ジョンソンの音楽は長い間埋もれていたが、1960年代以降のブルースリバイバルとともに再評価され、現在ではブルース史上に重要な位置を占めている。
「Cross Road Blues」は、その後のブルースミュージシャンに大きな影響を与えた楽曲であり、多くのアーティストがカバーを制作している。エリック・クラプトンの「Crossroads」も、ジョンソンの「Cross Road Blues」からインスピレーションを得て作られた曲として知られている。
曲名 | アーティスト | 年 | ジャンル |
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Cross Road Blues | ロバート・ジョンソン | 1936 | デルタ・ブルース |
「Cross Road Blues」は、ブルース音楽の原点を知り、その歴史に思いを馳せたい人におすすめの一曲である。ジョンソンの魂のこもった歌声とギタープレイは、時代を超えて多くの人々を魅了し続けるだろう。